秋田・消えた村の記録 '99年秋



阿仁町露熊で見かけた萱葺き屋根の廃屋です。雨の中というのも見直せば風情がありますね。



# 2-1
この旅にはシナリオがあって,それは秋田県は大潟村(八郎潟干拓地)在住の農家の佐藤晃之輔さんがまとめられた「秋田・消えた村の記録」(無明舎出版,1997年11月初版,以下「消えた村」と略す)です。
私は,1998年秋に神田の三省堂でこの本を見つけ,秋田県内で戦後から今までで,125もの集落が廃村となったことを知りました。
「消えた村」によると,県が「集落再編成事業」で,山間の小集落を移転統合し,生活環境の整備,就労の場の確保を進めた1969年(昭和44年)から1976年(昭和51年)頃の廃村がもっとも多かったそうです。これは「所得倍増計画」をはじめとする高度成長期に重なります。

# 2-2
廃村の記録というと,多くは集落単位であり,広くても市町村単位でしかまとまった書籍を知らなかったので,県という単位でていねいにまとめられている「消えた村」には大いに驚きました。奥付けに佐藤さんの連絡先が記されていたこともあって,「是非これら廃村のいくつかに一度足を運んで,できれば佐藤さんともお話がしたい」と思うようになりました。
忙しさのためなかなか腰を上げられなかったのですが,「ここで逃したら1999年は無理」という10月中旬に,8泊9日の東北ツーリングが成立させることができました。

# 2-3
佐藤さんからも「ちょうど刈入れが終わったころなので,是非お越しください」との快諾を得られたので,大潟村という,日本一の規模を誇る農業団地(という感じなのです)にも足を運ぶこととなりました。
125もの候補から回る集落跡を絞るのはたいへんな作業でしたが,まず「とほ」の宿「ゆきの小舎」がある老沢に行くことが決まりました。結果としては,「ゆきの小舎」の近くということで,折戸,合津,上新田,「ゆきの小舎」から大潟村までの間ということで,露熊,屋布,男鹿半島から夏油温泉に向かう途中,県南も回ろうということで,袖川,栩山・・・ 計八つの集落跡に行くことになりました。

# 2-4
八つの集落跡は,どこもそれぞれに個性的で,その風景はとても綺麗でした。
振り返ってみると,私が回った秋田の集落跡は,それほど山の深いところではなく,母屋が残されて手入れされていたり,田畑も耕作されていたりで,荒むことは少なく,昔ながらの雰囲気が残っているところが多かったように思えます。
この秋田の旅の経験が,その後,廃村探索を全国展開していく原動力になったと思います。
日本中に「行ってみたい」と思える場所が増えていくというのは,困ったことではあるのですが,喜ばしいことでもあります。


【「とほ」の宿とは】
「とほ」とは,「とほネットワーク旅人宿の会」が企画編集している宿の情報誌で,北海道の宿の情報が中心です。もともと草の根的な情報誌でしたが,最近は扱っている書店もいくつか出てきたようです。
「とほ」の宿は,「自分のプランで旅する人の宿」ということで,ユースホステルと民宿の中間的な匂いの宿が多いことが特徴です。
私は,「風の子」という知床にある宿の広告のデザインに係わったことがあるので,「とほ」には愛着があります。 この廃村を巡る旅では,秋田の「ゆきの小舎」と長崎の「カピタン」に泊まりました。


その1 鹿角市老沢,折戸

その2 大館市合津,鹿角市上新田

その3 阿仁町露熊,上小阿仁村屋布

その4 大潟村,五城目町北ノ又 〜佐藤晃之輔さんとご一緒しました〜

その5 鳥海町袖川,栩山




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